配信
8月19日(水)配信 株式会社The home 代表 喜田 克哉 さん
作られた生活感より、本物の生活感を。建材商社の13年と、サッカー30年からの起業。
株式会社The home 代表 喜田 克哉 さん
2026年8月11日 収録 / 聞き手:皆藤愛子
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「人に優しく、自分には強く」
略歴
喜田 克哉 (きだ・かつや)
株式会社The home 代表
東京都武蔵野市生まれ、小金井育ち。小学校高学年からサッカーを始め、高校3年まで選手として続ける。大学3年時、アルバイト先で指導していた子どもたちと保護者の声をきっかけに小学生のサッカーチームを設立し、以後30年にわたり代表を務めた(現在は教え子が2代目代表を継いでいる)。大学卒業後は建材を扱う商社に13年勤務し、輸入のタイル・カーペット・フローリング・石材などをゼネコンや設計事務所へ提案。独立後の2022年、実際に人が住んでいる一般住宅をCMやドラマの撮影ロケ地として貸し出すマッチングサービス「The home」を運営する株式会社The homeを設立。2025年には、撮影で使われることを前提とした家づくりを支援する「SHOOT STYLE」を開始した。
Field Note取材メモ
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01
おしゃれより、広さ
撮影しやすい家の基準は広さ。アイランドカウンター、ダイニング、ソファが一列に並ぶのが鉄板。
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02
作られた生活感の限界
ガランとしたスタジオに家具を入れても、見る人には分かる。本物の家で撮りたいという声が増えた。
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03
持たないから、強い
コロナで撮影が2か月止まった。自社で家を持っていないから固定費は出ない。面白い商売だと気づいた。
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04
人に優しく、自分に強く
うまい子は下の子の分まで頑張る。低い子は上を目指す。30年続けたチームのスローガン。
対談
皆藤:みなさん、ご機嫌いかがですか。皆藤愛子です。「皆藤愛子のFIELD NOTES」、今回のゲストは株式会社The home代表、喜田克哉さんです。よろしくお願いいたします。
喜田:喜田です。よろしくお願いいたします。
皆藤:実際に人が住んでいる一般住宅を、CMやドラマの撮影ロケ地として貸し出すお仕事。いわゆる撮影用の一軒家スタジオではない、ということですよね。
喜田:そうですね。普段、人が生活している本物の一軒家です。仕組みとしては、オーナーが、私どもが運営しているThe homeというサイトに登録をする。私どもが画像を処理して掲載をします。それを見て問い合わせを送るのが制作会社で、ドラマやCMの企画で「こんな家を探しています」と。こちらの提案も含めて、じゃあ今回はこの一軒家いかがですか、と話が進んでいきます。
皆藤:最初に登録をするときは、どんなことで選んでいらっしゃるんですか。
喜田:基準は、撮影がしやすい家です。まずリビング。サイズは大きめが撮影しやすい。おしゃれかどうかはあまり重要視せず、どちらかというと広さです。あとはキッチン。アイランドカウンターがあるものですね。演技をする方が正対して正面を向くじゃないですか。そこで洗い物をする、サラダを盛り付ける、そういうシーンが多いので、カウンターがこちら側を向いていると撮影しやすい。その前にダイニングテーブル、手前にソファーがあると、生活スタイルが奥の方まで見渡せる。それがもう鉄板の配置です。
皆藤:じゃあ、登録したいという方が来たときに、ご遠慮いただくこともあるんですね。
喜田:昔はお断りしていたお宅もありましたが、今は掲載と非掲載という2つのカテゴリがありまして。非掲載はウェブには出ないんですが、その中から私どもが提案をして選ばれ、CMやミュージックビデオに使われることは多々あります。
皆藤:貸し出す側のメリットって、どんなものなんですか。
喜田:もちろん報酬は前提としてあるのですが、オーナーさんは、注文住宅でああでもないこうでもないと突き詰めた結果、今の自宅がある。それがまた違った角度でテレビに、CMに出ます。撮影から2か月ぐらいでCMは出来上がりますので、ご家族でテレビを見ている時に自分の部屋が使われるというのは、それはまた楽しいこと。

皆藤:撮影する側には、どんなメリットがありますか。
喜田:普段はハウススタジオといって、ガランとしたスタジオに家具を入れて家っぽくするのですが、どうしても作られた感がありまして。見る人によっては、これはスタジオの家だなと分かります。なので監督さんやクリエイターの方も普通のスタジオは飽きてしまっていて、企画によっては本物の家で撮影をしたい、というのが結構あるんですね。オーナーさんはセンスがいい方が多いので、撮影チームからも「これは残しておいた方がいい」と言われます。
皆藤:一方で、マッチングをしたとしても心配事もあるかと思います。当日どんな人が来るかというのは事前に分かるんですか。
喜田:直接、制作会社とオーナーさんが打ち合わせをすることはなくて、必ず私どもスタッフが間に入ります。私たちが経由して、この部屋は使っていいか、冷蔵庫は使っていいか、照明はどう消すのか、といったことをオーナーさんにお伺いする。撮影中もオーナーさんに代わって私たちが家の管理をします。ものが倒れて傷がつくのは防がなければいけないので、養生会社を頼んでリスクを減らしていく。最初の撮影は不安だと思うんですけれど、回を重ねると安心も増していただいていると思います。

皆藤:設立以前は、建材を扱う商社に勤務されていたそうですが、どんなお仕事を。
喜田:海外から輸入している建材ですね。タイル、カーペット、フローリング、石材とか。お客様はゼネコン、工務店、設計事務所。ものをデザインしたり建てたりするところにセールスをするのが私の役割でした。
皆藤:そこを13年で辞めて、今のビジネスを始めたきっかけは。
喜田:退職してすぐに始めたわけではなくて、当時はフリーランスでホームページやシステムを作ったり。ただ私自身は技術がないので、営業職は継続して、お客様の間に入って注文を取る役割をしていて、その中の1つにThe homeがありました。友人がかっこいい家を作りまして、遊びに行った時に素敵な家だなと思って。自分でホームページを作って、カメラマンを呼んで、画像を掲載して。それが始まりだったんです。
皆藤:2022年の設立時は、まだ新型コロナの影響がありましたよね。
喜田:ありました。2か月間、撮影がぱったり止まりました。撮影って、家の中で密集しますよね。売り上げも2か月止まったんですけれど、あとから考えてみると、その時すでにスタジオ登録は何十件もあったんです。それを全部私どもが所有していたら固定費がすごくかかっていた。結果的によそ様の家をお借りしているので、その時の支払いは発生しない。それは面白いビジネスだな、と気付きました。

皆藤:喜田さんは武蔵野市生まれで、小金井育ち。ご実家は一軒家だったんですか。
喜田:最初は団地でした。武蔵野市の時は団地で、そこから小金井市で一軒家。ただ普通の小さめの一軒家なので、そこは直接The homeとはつながらないと思います。建築に興味を持ったのも、就職の時分に何ができるかと考えたときで。文系か理系かといったら私は文系で、人とコミュニケーションを取るのは嫌いな方じゃなかった。ただ、あまり難しいものは避けて。家や、それに使われる部材は私の中では分かりやすかったので、そういう方向に行ったと思います。
皆藤:高校、大学はどんな学生さんだったんですか。
喜田:小学校の高学年からサッカーを始めまして、ほとんど部活に時間を費やしてました。選手としては高校3年生で終わって、大学の時に、幼稚園生にサッカーを教えるアルバイトを始めたんですね。そこで初めて、自分がプレーする楽しみよりも、人に教える大切さや難しさを知って。小さい子はすごく無邪気でかわいかったので、そちらに方向性が傾いたのかなと。
皆藤:そこから、どんな経緯でサッカーチームを。
喜田:私が担当していた幼稚園のチームの中で1つだけ、すごく強いチームがありまして。ただスポーツクラブ内のチームだったので、細かいルールはあまり教えていなかったんですね。それでクラブに内緒で、土日に普通の小学生のチームと対戦をさせまして。そしたら火がつきまして、選手も保護者も「本当のサッカーを知りたいです」と。私は乗り気じゃなかったんですけど、先輩に「お前だったらできる」と言われまして。社会人にもなるし不安もあったんですけれど、先輩が忙しくなって今度、私が矢面に立つことになり、当時の私の部下が手伝ってくれて、なんとか続きました。
皆藤:今も続いているんですか。
喜田:今も。私は作ってから30年後に代表の座を降りまして、そのときに私の教え子が今の代表になっているので、もう安心です。
皆藤:会社としての今後の目標について、教えていただけますか。
喜田:The homeは、おかげさまで掲載しているオーナー様が年々増えて、撮影の実績数も増えていくので、そこは安心なのですが。1年前にSHOOT STYLEというビジネスモデルを立ち上げました。これもオーナーさんの声から考えたんですけれど、「私の家がもっとどう変われば、撮影がたくさん入りますか」という前向きな質問をいただきまして。ただ、もう出来上がっている家を少し変えても、撮影が入るかどうかはあまり変わらない。皆さんに「もっと早く知り合いになっておけばよかった」と言われて。普通の建築会社さんに撮影のノウハウはないはずなので、私が現場で積み上げてきたものと合体させて、撮影ありきの家をつくる。それがSHOOT STYLEです。
皆藤:これまでに「これに出た」みたいなものって、言ってもいいんですか。
喜田:具体的な会社名は言えないんですけれど、地上波のドラマは1年に4シーズンありますが、必ずどこかのシーンでは出ていると思います。皆さん知らず知らずのうちにThe homeの家をご覧になっていますし、CMもそうですね。オーナーさんに「映像が出来上がりました」と報告するときが、私はすごく楽しみで。こんな家具を入れると私の家ってこう変わるんですね、という発見は普通のお宅ではできない。そういう非日常が、私とオーナーさんのひそかな喜びになっています。
皆藤:最後に、生き方で心がけていらっしゃることを教えてください。
喜田:2つありまして。まずThe homeは、ほかに事例がなかったのでやり方がよく分かりませんでした。特に撮影のことは素人だったので、現場の方によく聞いていました。「この家って、もう少しこうだったら使いやすいよね」とか、現場の方が話している内容をよく聞いて。仲良くなった方には私のほうから「これってどういうことですか」と聞いて。現場に聞くというのは、私のスタイルかもしれないですね。現場の声を大切にする。それが1つ目です。
喜田:2つ目は、先ほどのサッカーチームと関わるのですが、チームで「強く優しく」という言葉を途中からスローガンにしまして。長くやっていると、成績がいい年代とか、どこかで優勝したりとか、そういうときもある。そうなると一部の人がスポットライトを浴びて、バランスが悪くなったりする。なので「サッカーがうまいだけじゃダメだよ」と。余裕があるんだったら、スキルが低い子の分まで君たちが頑張る。反対に、スキルが今もし低いとしたら、チームについていくのではなく、自分が上を目指していきなさいと。それが「強く優しく」。人に優しく、自分には強く。できてないところもあるんですけれど、それを目標にしてやっています。
皆藤:それを30年間、教え子の方々に伝えてこられたんですね。「皆藤愛子のFIELD NOTES」、ゲストは株式会社The home代表、喜田克哉さんでした。ありがとうございました。
喜田:ありがとうございました。