配信

9月2日(水)配信 Well Body株式会社 代表取締役 吉村 直途 さん

一日5時間、座っている。働く現場で負った負債は、働く現場で返す。

Well Body株式会社 代表取締役 吉村 直途 さん

2026年8月25日 収録 / 聞き手:皆藤愛子

収録スタジオにて。聞き手は皆藤愛子

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「やらぬ後悔より、やる後悔」

— 吉村直途 番組内より

吉村 直途 (よしむら・なおと)

Well Body株式会社 代表取締役

1992年、東京生まれ。2015年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。繊維部門を経てファミリーマートへ出向し、デザイナーの落合宏理氏と共同開発した「コンビニエンスウェア」の企画・推進を担当。ブランドプロデューサーとしてグッドデザイン賞を受賞した。2022年3月に伊藤忠商事を退社し、同年9月、理学療法士の水野純一氏とともにWell Body株式会社を創業。企業向けの出張フィジカルケア「Offi-Stretch®」と、店舗事業「CEL」を展開している。

Field Note取材メモ

  • 01

    会議室が、施術ルームに

    毎週水曜の朝10時から夕方5時まで。会議室のひとつがベッドの並ぶ施術ルームに変わる。

  • 02

    一日5時間の、その先

    5時間以上座るだけで不調のリスクが上がる。11時間を超えると死亡率は1

  • 03

    負債は、働く現場で返す

    頑張るほど体に負担がかかるなら、それは個人の責任ではない。現場で負ったものは現場で清算する。

  • 04

    鳴り物を鳴らし続けた

    鳴り物入りで入ったユースで、3年間1試合も出られず。天狗にならずにビリを経験した。

皆藤:吉村さんが4年前に立ち上げた会社の、事業の内容を教えていただけますか。

吉村:皆藤さん、理学療法士ってご存じですか。

皆藤:なんとなく……整形外科などで、でしょうか。私、骨折したときにお世話になりました。

吉村:そうです。骨折だと診断するのが整形外科医で、そこからリハビリをするのが理学療法士。体のプロフェッショナルである医療従事者ですね。その理学療法士を私たちが抱えて、会社の会議室をお借りして出張して、従業員の方に施術をお届けしています。

皆藤:最高ですね。その日が楽しみになります。

吉村:導入いただいている会社さんだと、たとえば毎週水曜日は朝10時から5時まで、会議室のひとつが施術ルームになっていて、30分ほど、ベッドで対面で施術を受けられる。そんなイメージです。

皆藤:まさに体のプロですね。導入されている会社の規模はどのくらいなんですか。

吉村:少ないところで5名、大きいところだと7,000名くらい。大小かかわらず使っていただいています。経営者の方が従業員を大切に思われていれば、コストというよりは人への投資というイメージで捉えていただけます。

皆藤:派遣されるのは、一度におひとりですか。

吉村:5時間ほどお邪魔すると一日10人くらいは施術できるので、1か月で四、五十人は見られます。大きい会社さんだと、一度に5人で伺うこともあります。

皆藤:具体的には、どんな順序でどんなケアをされるんですか。

吉村:肩こりだったら寝て揉んで終わり、では全然なくて。まず3分から5分は体のチェックをします。姿勢、肩甲骨の位置、普段の体の使い方。……ちなみに私は理学療法士ではないんです。社内で私だけできないんですけど。

皆藤:そうなんですか。

吉村:私が見ていただいたときは、肩こりの原因は左の足首を怪我したことだと言われました。過去に怪我したところがバレちゃう。そうやって紐解いたうえで施術とストレッチをして、最後は自宅でできるセルフストレッチをお教えする。それで30分です。

皆藤:受けるのに、事前の準備は必要なんですか。

吉村:何も要りません。オフィスカジュアルで働いていらっしゃったら、そのまま会議室に行って、そのまま受けて、そのまま戻れる。

皆藤:受ける前と受けた後で、きっと違いますよね。

吉村:姿勢が全然変わってきます。

皆藤:会社のミッションに「常識を変え、体を変え、人生を豊かに」とあって、その下の文章がまたズバッとしていて。どういう思いで書かれたんですか。

吉村:共同創業者の水野と私、2人で思い思いに出した言葉を、コピーライターの方にまとめていただいた形です。

皆藤:特に伝えたいところは、どこですか。

吉村:「どんな挑戦も、どんな幸福も、すべての土台は体だ」というところですね。私も10年ほどサラリーマンをする中で、知らず知らずに肩こりが溜まったり腰痛になったりということがあって。何を成し遂げたとしても、健康体であることが結局いちばん幸せだなと、すごく思っていて。

皆藤:働くなかで健康リスクを高めてしまっているのは、具体的にはどんなことなんですか。

吉村:日本人はそもそも座っている時間が、世界的に圧倒的に長いんです。一日5時間以上座っているだけで、いろいろな不調のリスクが高まると言われています。

皆藤:5時間は、だいたい座っていますよね。

吉村:皆さんそうですよね。会食の多い経営者の方だと一日11時間を超えてきたりもして、そうすると死亡率が1.4倍くらいになる。人間は歩いているべき動物だと思います。

皆藤:「働く現場で負った身体的な負債は、働く現場で返す」ともおっしゃっていますが、これはどういうことなんですか。

吉村:頑張れば頑張るほど体に負担がかかるというのが、今の働き方だと思うんですよね。それは個人の責任なのか、という思いがすごくあって。経営者が責任を持って、働いていただいている方が負ってしまった身体的負債は、働く現場できちんと清算する。それが本当は正しい考え方なんじゃないかなと思っています。

皆藤:お仕事が終わって帰ってからの、個人の問題だと思っていました。

吉村:そうおっしゃる経営者さんも多いんです。ただ、本当に心から大切に思われている経営者さんは「確かに」と。業務時間内に受けていいですし、勤務時間としてカウントされている会社さんも結構あります。

皆藤:そこまで考えてもらえたら、幸せですね。

皆藤:共同創業された水野さんとは、どんな間柄なんですか。

吉村:小学校のサッカーチームの同級生です。学校は違ったんですけど。私は鍵っ子で、親が家にいないタイプだったので、友達の家によくご飯を食べに行っていて。水野の家にも、月に三、四回は行っていた気がします。

皆藤:その頃、吉村さんはどんなお子さんだったんですか。

吉村:生きていかなきゃいけないので、親御さんたちに「ご飯を食べさせてあげたい」と思わせる可愛げがあったと思います。

皆藤:その頃から人の懐に入るのがお上手だったんですね。水野さんはどんな方だったんですか。

吉村:今の身長が168センチくらいなんですけど、小学校3年生のときからもう168センチで。めちゃめちゃ大きくて、その分すごくどっしりしていて、素直な人間ですね。

皆藤:そこからずっと、お友達だったんですか。

吉村:学校は一度も一緒になっていないんですけど、社会に出てからも年に一回くらいは会う間柄でした。職種もフィールドも違うなかで合うのは、珍しい気がします。

皆藤:何がそんなにポイントだったんですか。

吉村:バイブスですね。

皆藤:学生時代はサッカーに打ち込まれたそうですが、今のお仕事につながる経験はありましたか。

吉村:サッカーで作られた気がします。高校時代は三菱養和のユースチームに所属していたんですけど、1試合も出られませんでした。中学から高校へ鳴り物入りで入ったのに、ずっと鳴り物を鳴らし続けました。

皆藤:(笑)

吉村:そこはすごい挫折があって。でも、ああいうときに天狗にならずに、本当にチームのビリを経験しているというのは、何においてもよかった気がしますね。環境が変わったら、本当にお山の大将だったなと。出られないなかで、応援でチームに貢献しようと、自分を変えることができた。

皆藤:それでも心が折れずに続けるというのは。

吉村:起業もうまくいくことばっかりじゃないので。圧倒的な挫折があるのは、いいことなんじゃないかなと思っています。

皆藤:大学のご卒業後は伊藤忠商事へ。ファミリーマートでよく見かけるあのソックスも、吉村さんが企画されたんですね。

吉村:大ヒット商品ですよね。厳密に言うと、デザイナーの落合宏理さんという方と一緒に企画を進めてきたという感じです。2019年の10月ごろからスタートしたプロジェクトで、実はソックス以外にも100個くらいアイテムがあるんです。

皆藤:それまでは、白い肌着や白と黒のソックスでしたよね。

吉村:そうでした。それを本当にパリコレに出られるようなデザイナーさんで作ってみたら売れるんじゃなかろうか、と。すごくライトですけど、そういう成り立ちです。

皆藤:大変でしたか。

吉村:めちゃめちゃ大変でした。今でこそ広がっているのでイメージがつくと思うんですけど、当時はどなたもつかないんですよね。白と黒の売り場に柄のソックスなんて、絶対売れないでしょうと。

皆藤:そんな中で、どうしてヒットすると思ったんですか。

吉村:かっこいいな、と純粋に思って。当時28歳だったので、28歳の男子は買うよなあと。

皆藤:他には、どんなお仕事をされていたんですか。

吉村:ファミリーマートに出向する前は、実はブラジャーをずっと作っていました。

皆藤:ブラジャーを。

吉村:縫ってはいないですけど。ブラジャーって、部材が30個くらいあるんですよ。それをベトナム、中国、タイ、台湾などから集めてベトナムに送り込んで、縫製して、最後に日本に輸入してブランドさんにおろす。そういう仕事を2年半くらいしていました。

皆藤:それは、どうしてその配属に。

吉村:びっくりしました。繊維カンパニーって、伊藤忠で言えばアルマーニやコンバースのイメージで、かっこいい商売だろうなと思っていたら、配属初日、座席のライトにブラジャーがかかっていて。「お前、これを分解しろ」と。

皆藤:知るために分解する。

吉村:どの部材がどこに使われているか、全部今でも覚えています。

皆藤:毎日使う女性より詳しいですね。そんな経験を経て、退職して起業される。きっかけは何ですか。

吉村:ある方との出会いが一番大きいです。当時ファミリーマートの社長だった澤田貴司さん。もともとユニクロの副社長で、伊藤忠にいらっしゃった方です。私が現場の責任者としてコンビニエンスウェアをやって、5年くらい一緒に仕事をして、「一緒に会社やろうぜ」と。私も漠然と、こういうかっこいい大人になりたいなと思っていたので。

皆藤:そこから今の事業に至ったのは、どういう経緯だったんですか。

吉村:好きで得意なゾーンは、起業する方にとってすごく重要だと思うんです。私は健康オタクというか、走る時間を絶対に作るとか、早起きして筋トレするとか、サッカーを続けるとか、無意識にかなり無理をしてきていて。何においても健康は大事だなと思っているので、そういうゾーンを選びたかった。

皆藤:今日も自転車でいらっしゃったと伺いました。

吉村:一番速いんですよ。六本木って意外と交通の便が難しいので、青山から六本木は自転車が一番早いんです。

皆藤:それは健康のため、というのもあるんですか。

吉村:健康のためもそうですが、ちょっと一足早く皆藤さんに会いに。

皆藤:ありがとうございます。最後に、吉村さんの大切にされている言葉を教えてください。

吉村:「やらぬ後悔よりやる後悔」です。とにかく迷ったらやる。あのときやればよかったな、と思うのが、やっぱり一番つらいんですよね。やってみて失敗しても絶対に糧になっていくので、迷ったらやるということを心がけて生きてきています。

皆藤:最近の挑戦は、何かありますか。

吉村:今、毎朝5時に起きて筋トレをしています。

皆藤:わあ!

吉村:子どもが2人いて、夜はなかなか時間がなくて。これも周りに宣言をして、やるしかない状態を作りました。言うだけの人になっちゃうのが嫌なので。

皆藤:周りを固めて、自分を追い込んでやる。ありがとうございました。